所蔵作品展画家のメタモルフォーゼ
展覧会情報
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開催期間
2021年7月28日 〜 2021年9月5日 まで
概要
洋画家・中村研一は戦後、明るい色彩とのびやかな筆致による女性像や室内画を数多く描きましたが、他の画家にとってもそうであるように、この画風は一朝一夕に生まれたものではありませんでした。本展では中村作品におけるモティーフと描写の変化―これを本展ではメタモルフォーゼととらえます―を、対比的にご紹介致します。明治28 (1895)年に福岡県で生まれた中村は、青年期に鹿子木孟郎の下で学んだ他、 大正4 (1915)年には東京美術学校に入学、岡田三郎助の指導を受けました。そのため初期作品には太平洋画会や、外光派の特徴が見て取れます。中村はそうした影響の上に、陰影のコントラストに特色を持つ画風を展開、官展を中心に発表を続け高く評価されました。戦後にかけてはさらに大きく作風が変化し、筆跡を残す大胆なタッチ、色鮮やかで平面性が際立つ背景、黒い輪郭線が見られるようになります。ここからは中村が一般的な意味での「リアリズム」から遠ざかりながら、新たな表現を模索する様子がうかがえます。一方モティーフに着目すると、戦時下にはベトナムやシンガポールの風景、戦艦の浮かぶ海景、現地の女性像、また戦争記録画の下絵として兵士のエスキースなどが描かれました。また戦前から描き続けていた妻の単身像は戦後にも引継がれ、中村のライフワークとも呼べる主題となってゆきました。1920年代から60年代にかけての、驚くばかりの画風の変化(メタモルフォーゼ)をお楽しみ頂ければ幸いです。
また二階展示室では、「水辺のドローイング」展と題し、所蔵品の中でも夏らしい水辺を描いた風景画を中心に展示致します。