オリンピックと寺山修司
展覧会情報
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開催期間
2020年6月2日 〜 2020年10月18日 まで
概要
寺山にとって、個人と国家、スポーツと芸術表現、肉体と論理という命題は、二律背反の普遍テーマでした。アジア初の五輪開催地となった東京オリンピック(1964年)は、日本にとって戦後復興を世界にアピールするための最高の舞台でした。開催に向けての大規模な都市開発は、街並みとそこに暮らす人々の生活を変貌させてゆきました。クリーンで安全な東洋の大都市TOKYOを世界に印象づけた日本は、続く1970年の大阪万博でも成功を収め、先進国としての立場を確立していきます。
1964年当時、杉並区に住んでいた寺山は、目まぐるしく変化していく街を間近に見ていました。同年に、変わりゆく「新宿荒野」を舞台として、月刊誌『現代の眼』に小説「あゝ、荒野」の連載をはじめています。同作には、大きな潮流から零れ落ちていく、マイノリティのありのままの姿が描かれます。五輪とは、このうえない華々しさと引き換えに、社会に影をもたらすものでもあったのです。その後、前衛演劇の旗手として世界に進出した寺山は、自らその光と影を体験することになります。
本展では、寺山にとって初めて身近なものとなった1964の東京大会の体験から、自身の主宰する劇団とともに参加した1972年のミュンヘン・オリンピック芸術展示までを中心に、寺山とオリンピックの関わりについて紹介します。
近代オリンピックの栄光と影。その観察者であり、当事者でもあった寺山が、人類最大のスポーツの祭典をどのように評価し、表現したのでしょうか。