追善の美術—亡き人を想ういとなみ—
展覧会情報
開催期間
2023年7月7日 〜 2023年8月13日 まで
概要
「追善」とは、亡くなった人のために生きている者が善い行いをすることによって死者の苦しみを除去し、冥福を祈ることを意味します。仏教においては、追善供養のために仏事が営まれたほか、写経が行われ、仏像や仏画が制作されてきたことが、文献や様々な遺品によって知られています。特に浄土思想の流行により、現世を生きる苦しみを自覚するとともに、死後に待ち受ける世界への関心が高まると、個々の信仰に基づいた多様な美術が生み出されるにいたります。仏像や仏画などのほかに、持ち主の供養のため、絵巻や手紙(消息)といった故人の遺品に、経文や印仏を摺り重ねることが行われ、さらに中世から近世には、亡くなった人の供養として肖像画が描かれるようになりました。そしてこうした供養は、死者のためだけではなく、生きている者にとっても善行を積むという重要な意味を持っていました。
本展では、当時の人々がどのように身近な「死」と向き合ってきたのか、その結晶として生み出された多様な美術品を通して、亡くなった人々の供養をめぐるいとなみをご紹介します。