2021年仮面祭企画展:ヴェネチアン・グラスが映す栄光—ペストを乗り越えた先に
展覧会情報
開催期間
2020年12月27日 〜 2021年4月18日 まで
概要
地中海の覇者であるヴェネチア共和国の栄華は、ペストの流行を乗り越えた先にありました。当時、世界初となる検疫を行い、被害拡大を防いだヴェネチア共和国の主要な産業は、古代ローマやイスラム文化圏、ビザンチン帝国のガラス技術を継承したガラス産業でした。15世紀後半には、高級工芸品としてヨーロッパのガラス市場をほぼ独占するに至ります。イスラムの影響を受けたエナメル彩や東洋の白磁を模した乳白ガラス“ラッティモ”、レースを閉じ込めたようなレース・グラスに、華麗な熔着装飾と、様々な技法が生まれ、発達し、海を越えて人々を魅了しました。同様に、ヨーロッパ中の富豪を虜にした祝祭が「カーニバル」です。イエス・キリストに倣って節制する四旬節を前に歓楽を求めるカーニバルは、18世紀に最高潮を迎えます。身分差が明確であったヴェネチアにおいて、カーニバルの期間だけは、仮面で互いに素性を隠して娯楽に興じたのです。このカーニバルの衣装もペストによって影響を受けました。本来、春の訪れを祝う意味を持つカーニバルは、オーストリアの支配下に入った事で1779年に一度禁止されますが、1979年に復活して以降は世界中から人が訪れています。
ペストによる大災禍の後、ヨーロッパではルネサンスが起こります。封建社会が崩壊し、中世から近世、近代への道を切り開きました。「暗黒の中世」が去り、黄金時代を迎えたヴェネチア共和国の繁栄と暗く長い冬の終わりを告げるカーニバルの文化を、ヴェネチアン・グラスと坪谷氏の写真作品を通してご紹介いたします。