蔦谷楽ワープドライブ WARP DRIVE

展覧会情報

蔦谷楽ワープドライブ WARP DRIVE
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開催期間

2022年7月23日 〜 2022年10月2日 まで

概要

 蔦谷楽はニューヨークを拠点とし、核の歴史的悲劇をテーマとして日米両国でのリサーチやインタビュー、またアーカイブの研究を通して、制作活動を続けてきた。核問題は日本で語られる物語とアメリカのそれでは大きく違うところもあれば、共通点もある。蔦谷はその両方に目を向け耳を傾け、国境を超えて共有されるべき物語を美術作品として構築しようと模索する。多様な社会的役割をもった核被害者や関係者たちを深く観察し、既存の意味や理解を超えようとする—それは、繰り返し語られてきた歴史物語を戦後77年経った時代にもう一度語る上で、在米日本人アーティストとしての蔦谷個人としての挑戦でもある。戦争を知らない世代が戦争を自分たちの問題として抱えるための新しい物語、それが蔦谷の作品の根幹となっている。

 原爆の図丸木美術館での「ワープドライブ」は、蔦谷の日本初個展、アメリカで活動してきた作家のホームカミングである。メインの展示スペースでは、2種類のバラック—第二次世界大戦時にアメリカで建設された日系人強制収容所のバラックと戦後の広島長崎に建てられたバラック—というモチーフが接合した構造物に蔦谷の映像作品が組み込まれ、また小スペースでは平面作品が一堂に展示となる。

 蔦谷の映像作品にはリアリティが込められている。「BeautifulSkyGolfCourse」は、大日本帝国軍による真珠湾攻撃直後にアメリカでスパイ容疑をかけられ最初に収容された日系1世の男たちの物語。蔦谷は、日系人捕虜の収容されていたバラックや国家忠誠の有無を調べる尋問をかけられた法廷が再現保存されているモンタナ州のフォートミズーラ歴史博物館に6週間滞在し、この作品を完成させた。収容所生活の中で自分たちでゴルフコースを作ったという日系人捕虜の当時のエピソードにインスピレーションを発している。

 また、第二次世界大戦時の核兵器製造、広島長崎への原爆投下、冷戦時代のアメリカ、そして現代にまで続く放射能の影響と隠蔽の経緯を作品と昇華させたのが「ENOLA’SHEAD」だ。蔦谷は核兵器の歴史に関わった場所、ニューメキシコ州のロスアラモス・アラモゴード・アルバカーキー、ワシントン州のハンフォード・スポケーンインディアン居留地、ユタ州ウェンドーバー、そして広島を現地取材し、日米の被爆者、歴史家、そしてさまざまな核の専門家たちに言質を取りながら物語を作り上げていった。この作品の中で、登場人物たちは奇妙な動物や虫、もしくは植物の形をした面をかぶり、行動を起こす。この面は日本で7、8世紀に流行しながらも鎌倉時代には絶滅した伎楽面を模しており、映像の中では、三途の川が凍りついた世界で鳥の顔をした博士が数々の面を発掘するシーンから始まっている。絶滅した文化を掘り出していくというメタファーが、伎楽面という素材の選択や核の絶望的な未来に交差してゆく。

 「StudywiththeMoon」は、B-29エノラ・ゲイが戦後広島に原爆を投下したのちに、メリーランド州アンドリュース空軍基地に雨ざらしで屋外放置されていたというワシントン・ポストの記事をヒントに制作された。窓ガラスが割られ、部品を盗まれた爆撃機。人間に蹂躙され、鳥や様々な害獣に住みつかれたエノラ・ゲイがその間にみた夢というのがモチーフになっている。
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